史上最強のウィルスに向き合うために

投稿日:2020年5月22日

史上最強のウィルスに向き合うために

 

1.感染の経緯

 

新型コロナウィルスの感染経過を辿りますと、1月24日から1月30日迄の期間、中国では「春節(旧正月)」で一週間のお休みになりました。

 

昨年11月17日に、武漢でSARSのような症状が現れたと報道され、実際に12月8日に湖北省武漢で原因不明の肺炎が発症し感染が拡大しました。

 

年が明けて1月1日に、武漢警察が「インタ-ネット上で虚偽情報を掲載した」罪で、李医師を始め8人がデマを流したことから「自己批判文」への署名を強要し、訓戒処分としました。おかしなことにデマだとしながら、同日、華南海鮮卸売市場を閉鎖したのです。

 

1月7日、中国政府はこの肺炎を新型コロナウィルスによると発表し、その2日後に初の死亡者を出しました。

 

感染が拡大したため、政府は1月23日午前0時に武漢をロックダウン(都市閉鎖)に踏み切ったのです。ところが、都市閉鎖される前に武漢市民500万人が武漢から逃げたらしいのです。千人程度なら兎も角、500万人もの市民が脱出したということは、党の決定を事前に知りうる立場にあった者が情報を流し、体力・能力・財力がある者だけが武漢から脱出し、取り残された人は見捨てられた人だったと推察されます。

 

この脱出劇こそが世界中に感染をまき散らしたとされているのです。

 

1月25日は春節です。休みはその前日から一週間ですので、少なくてもロックダウンした1月23日以前に、市民は武漢から湖北省全域だけでなく、中国全土、更に海外にも移動したためコロナは世界に広がってしまいました。

 

中国政府は、この春節の日に海外渡航禁止を決定しています。

 

翌月の2月6日、訓戒処分された李文亮医師がコロナに感染して、34歳の若さで亡くなりました。これを機に、国民の政府批判が高まったのです。

 

更に、感染拡大を隠ぺいするために、2月14日、中国国家衛生健康委員会は、感染者を少なくするために、検査で陽性であっても発熱や咳のような症状がなければ感染者として発表しないという基準に変更しています。

 

さらに問題なのは、3月に入ってしばらくすると、中国本土以外(海外)での感染者数が中国本土での感染者数を超えたことが判明しました。

 

すると、北京大学のチョウ(女偏に兆)洋国家発展研究委員長が論文で、「地方当局者は“新たな感染者を一人でも出せば処分する”という指令を受けている」と異例の報告(3月15日報告)を出したのです。

 

このことから、中国は感染症の鎮圧目標達成を、医療でなく統計デ-タを改ざんすることによって鎮圧成功に導いたとされています。

 

石平氏は、「感染者数は目標値に従い、政府が決めれば、ウィルスさえ党の方針に逆らえない」と皮肉交じりで話していました。

 

日本では、ロックダウンの一週間前の1月16日、武漢に滞在して日本に帰国した神奈川県在住の男性が日本で初めて新型コロナウィルスの感染者となっています。

 

更に、その2日後、東京都の個人タクシ-組合の新年会が屋形船で行われ、100人の参加者のうち4名が感染したのです。(原因は1月15日に中国湖北省出身の60名の団体客の対応をした従業員が感染し、この従業員から新年会参加者に感染した)

 

ダイヤモンドプリンセス号が横浜港を出発したのが、その2日後の1月20日だったのです。

 

ダイヤモンドプリンセス号の乗客(80歳の男性)が風邪の症状のため、1月25日に香港で下船しましたが、既にこの男性は、1月20日時点で感染していたはずです。

 

ダイヤモンドプリンセス号は、戦艦大和よりはるかに大きな船ですが、窓が開かないために換気ができない状態、即ちコロナ感染にとっては最悪の状況だったのです。

 

2月1日、乗客・乗員の集団感染が確認され、(最終的には乗客・乗員3,711人のうち感染者は634人でした)2日後の、2月3日に横浜港に到着、約1ケに及ぶ隔離を得て、3月1日、ようやく乗客・乗員の下船が完了しました。

 

ここで疑問なことは、西欧で最も早い時期の1月21日にアメリカで初の感染者が出たことです。

 

アメリカの感染者は、中国経由ではなくヨ-ロッパ経由とされています。

 

世界の主な国で、初の感染者が出た国名と日付を見てみましょう

 

フランス                  1月25日         スペイン           2月 2日

 

ドイツ                      1月28日         ベルギ-          2月 4日

 

フィンランド             1月29日         イラン              2月19日

 

イタリア                   1月30日         デンマ-ク       2月24日

 

スェ-デン              1月31日          ノルウェ-        2月26日

 

イギリス                  1月31日          ポルトガル       3月 2日

 

ロシア                     1月31日          バチカン          3月 6日

 

1月30日に、WHOが非常事態宣言を出したことから、2月2日にアメリカは、中国からの入国を規制しています。(中国政府は2月6日海外渡航禁止を決定)

 

ところが既に、1月~3月までに欧州から220万人がアメリカに入国しています。

 

3月には、ヨ-ロッパ全土に感染者が出ており、イタリアは、1月30日に2人の感染者を出した翌日に非常事態宣言を出していたにも拘わらず、ニュ-・ヨ-クは、イタリアから持ち込まれたといわれています。

 

世界中を瞬時に移動できる時代に、アメリカは欧州からの入国規制を3月13日までしなかったのは、コロナを見くびっていたに違いありません。

 

日本政府の対応はどうでしょう。

 

1月16日  日本で初の感染者が出ました。

 

1月24日  東京都で初の感染者が出ました。

 

1月27日  日本国政府は、新型コロナウィルスを指定感染症に指定しました。

 

1月28日  奈良県で初の感染者が出ました

 

1月29日  大阪府で初の感染者が出ました

 

2月13日  湖北省・浙江省の滞在歴がある外国人の入国を拒否しました。

 

         同日、愛知県で初の感染者が出ました。

 

2月15日  名古屋でハワイから帰国した60歳代の女性が、スポ-ツジムで70歳代の夫婦に感染させ、厚生労働省は、クラスタ-感染の拡大防止に本腰を入れました。(もう既にアメリカでは、この時点で感染爆発が起きていたのではないかと思われます)

 

3月20日  IOCがオリンピックの延期を発表しました。

 

3月25日  中国、韓国、欧州にレベル2・3の「渡航中止勧告」を出しています。

 

韓国からの入国制限を4月末までと発表すると、韓国は直ちに遺憾の意を表明しました。

 

4月  1日  中国、韓国の一部地域の入国制限をし、

 

4月 3日  午前0時から、米、台湾、イギリス等73ケ国の外国人の入国制限

 

4月 7日  7都道府県に緊急事態宣言(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)

 

4月16日  7都道府県に加え、6道府県の計13都道府県を特別警戒都道府県に指定、更に全国に緊急事態宣言を発令しました。

 

4月18日  国内感染者が一万人を超えました

 

4月24日   ロシア・中東等14ケ国の入国制限

 

4月29日  世界87ケ国の入国制限をし、国際郵便の引き受け停止は196ケ国。即ち、全世界からの国際郵便の引き受けを停止しました。

 

 5月 4日  安倍総理が緊急事態宣言を5月31日まで延長

 

 5月14日  政府は、39県の緊急事態宣言を解除

 

5月31日  この日から週一回のペ-スで国家安全保障会議(緊急事態大臣会合)を開催することになりました。

 

イタリアが2月1日に非常事態宣言を出していたことから比べると、日本の対応はかなり遅かったのではないかと推察されます。

 

習近平国家主席の来日、オリンピックの開催国という事情があったのではないかと思われます。

 

2.インフルエンザは話題にのぼらなくなってしまった

 

厚生労働省の発表では、インフルエンザの流行は昨年12月までは対前年を上回って流行していましたが、1月に入ると対前年を大きく下回り、1月20日から1月26日は1/3まで減少し、2月に入り前年比並みに落ち着き横這いとなりました。

 

インフルエンザは流行であり、年によって大きく異なりますが、今年に入って患者数が少なくなったのは、1月16日に新型コロナウィルスが確認され、例年以上に手洗い等の対策が行われたことと、暖冬(高湿度)の影響だといわれています。

 

今シ-ズンの累計患者数は695万人、昨シ-ズンの累計患者数は1,108万人で400万人余り減少しています。

 

昨年、2019年1月だけでインフルエンザ感染者は一日平均54人、1685人の死亡者が出ています。

 

2019年のインフルエンザと5月10日現在の新型コロナウィルスの感染者と死亡者を対比すると、

 

日    本                       感 染 者                        死 亡 者

 

インフルエンザ                  11,080,000人      3,325人

 

新型コロナウィルス                      16,049人        678人  

 

世    界             感 染 者             死 亡 者

 

インフルエンザ            14億人~21億人  20万人~50万人

 

新型コロナウィルス             4,025,140人       279,329人

 

但し、インフルエンザは年間、新型コロナウィルスは今年に入ってから5月10日までの違いがあり、更に今後大きく伸びたとしても、日本では、インフルエンザ以上の感染者及び死亡者を出すとは考えにくいと思われます。毎年、インフルエンザの死亡者は、3,000人を超えているのに医療崩壊したという話は聞かないのです。

 

新型コロナウィルスがこれだけ少ない数で医療崩壊が起きているのは何故なのか。

 

ワクチンと治療薬がないから恐れられているのか。 

 

実は、インフルエンザのワクチンと治療薬の信頼性は褒められたものではありません。

 

A型を予想してワクチンを大量に用意して作ったらB型が流行し、B型を予想してワクチンを大量に用意して作ったらA型が流行した例が何度かあります。

 

治療薬だって、副作用の問題は何も解決していません。治療薬で治ったのか、自然免疫の力で治ったのか区別がつきません。

 

インフルエンザに比べ、新型コロナウィルスのほうが感染力と毒性が強いとは言い切れません。

 

感染者と死亡者の割合でみれば、インフルエンザのほうが致死率は高くなっていますが、新型コロナウィルスは、無症状感染者が把握できないため、正確な感染者数が分かりません。だから致死率の比較は出来ないのです。

 

インフルエンザより遥かに感染者と死亡者が少ないにも拘わらず、日本全国で経済封鎖をしたために、今後、新型コロナウィルスの死亡者より生活困窮者の致死率は数倍から数十倍になるのではないでしょうか。

 

一旦収束しても、第二波、第三波の感染を恐れて、経済活動を緩めることにはならないと思いますが、「Stay・home」政策を繰り返しすれば、新型コロナウィルスに感染して亡くなる確率よりも、生活破綻して亡くなる確率は圧倒的に多くなります。

 

休業を要請された零細な商店主・零細企業は、収束後も明るい未来はありません。ワクチンが出来るまでとても耐えられないでしょう。

 

国家の役割は、国民の生命と財産を守ることです。感染症の専門家の意見だけを重視している今の政策は、新型コロナウィルスの感染を少なくすることにはなるでしょうが、それによって、遥かに多くの国民の生命と財産を犠牲にしてしまいます。

 

新型コロナウィルス感染症対策専門家会議のメンバ-12人のうち11人が医療関係者で、残り1人は弁護士であり、経済の専門家は入っていません。

 

緊急事態宣言を発令することは、経済に大きなダメ-ジを伴うことですから、政治判断するためには経済学者も意見の異なる複数人入って欲しかったと思います。

 

今後、新型コロナウィルス以外にも新種のウィルス感染が必ず起こり得ます。

 

新種のウィルス感染が起きるたびに、今回のような措置が今後も採れるでしょうか。

 

ウィルスと人間は共存していかなければなりません。

 

ヒトの免疫は、ウィルスや細菌との共存可能を前提に与えられた、生命の「根源的機能」です。免疫力が強いものが生き残り、弱いものが淘汰されていく。

 

生命の進化は冷酷です。

 

しかし、科学技術の発展は、生命の「根源的機能」を自然淘汰に任せることなく、それに抵抗してきました。だから、未知のウィルスに対しては、正しく恐れ、必要以上に恐れないこととされているのです。

 

インフルエンザに比べ、新型コロナウィルスのほうが遥かに感染者と死亡者が少ないにも拘わらず、何故これほど大騒ぎをするのでしょうか。

 

それは、100年前のスペイン風邪の恐怖が甦るからです。

 

もう一つ大事な点は、ヒトは未知のものに対しては、恐怖を覚える習性があるからです。

 

それでは、この未知のウィルスはどんなウィルスで、何が恐ろしいのか次に見ていきます。

 

3.細菌とウィルス

 

細菌とウィルス。この関係はよくわかっていないのです。

 

細菌には、細胞がありその中に核酸(DNA、RNA)があり、呼吸や光合成によってエネルギ-を得ており、何となく生物の形をとっています。

 

しかし、ウィルスには細胞がなく、核酸の周りを蛋白質の殻で覆われているだけで、細胞のようにDNAとRNAの両方は持っていません。どちらか片方だけしかないのです。ということは、遺伝子情報しかないウィルスとコピ-機能しかないウィルスの2種類となるのですが、これを補うために細胞に寄生するのです。

 

可哀想に、細胞はウィルスの遺伝子情報をいやいや取り込むか、無理やりコピ-させられてしまうのです。

 

ウィルスは、自分自身動き回って細胞に寄生するエネルギ-はありません。エネルギ-を作る器官がないので、自分自身で生きてはいけません。自分で動けないから細胞に寄生して増殖する道を選んだのです。

 

それでは寄生するまでのウィルスは何処でどう生きていたのか不思議です。

 

ノミ、蚊、鳥に寄生する以前のウィルスはどこで生きていたのか。

 

細胞に寄生しないとウィルスは生きていけないとすると、細胞が先輩でウィルスは後輩になると推察されますが、よくわかりません。

 

ウィルスの起源はさまざまな説があります。現在、最も受け入れられているのは、細胞の遺伝要素の一部が細胞から飛び出したという説です。白血病等の原因となるレトロウィルスにはがん遺伝子があり、動物の染色体に見つかっていることからこの考え方があります。

 

だから、人間のウィルスは動物由来のもので、人に感染して広がったと考えられているのです。野生動物はそれぞれ固有のウィルスがいくつも存在しており、人類が知っているウィルスはごく一部のようです。

 

ウィルスは、本来、種が違うと感染しないものだったのですが、突然変異して感染出来るウィルスになることがあります。

 

例えば、インフルエンザ・ウィルスは、鴨の腸内にいた無害なウィルスですが、ニワトリに感染すると有害なウィルスになります。鴨も当初は有害だったかもしれませんが、長年共生して無害になったと思われます。新型コロナウィルスも長年経てば、人にとって無害になるかもしれません。

 

RNAウィルスが存在するということは、DNAがなくてもRNAだけで情報を蓄え、そのRNAはDNAの機能をも持っていなければなりません。

 

新型コロナウィルスも、原因を究明するには長期間要し、解明できた頃には終息しているか撲滅しているかもしれません。

 

人とウィルスの関りは、人の誕生から始まっており長い付き合いなのです。

 

ウィルスの治療は、細菌治療と異なり容易ではありません。それは、細菌とウィルスの性質が全く異なるからです。

 

結核・赤痢・コレラ・梅毒のような細菌性の感染症には、抗菌薬が用いられます。その中でも一般的に用いられる抗生物質(微生物が作った化学物質)は、細菌の機能を抑制し増殖を阻害するためかなり効果があります。

 

細菌には細胞壁があり、細胞には細胞壁がありません。抗生物質は、この細胞壁の合成を邪魔するから、細菌だけを殺すことが出来るのです。

 

ただ、抗生物質に問題がない訳ではありません。抗生物質は、人間にとって必要な細菌もありますが、それまで殺してしまうのです。常在菌を殺してしまうと、傷が治りにくくなり、腸内細菌を殺してしまうと大腸の機能を衰えさせて下痢になり易くしてしまいます。

 

更に、服用し続けると副作用として、薬剤耐性菌ができてしまう恐れがあります。典型的な例がペニシリン耐性黄色ブドウ球菌です。それを殺す薬がテトラサイクリンですが、それも効かなくしてしまったのがMRSA(メチシノン耐性黄色ブドウ球菌)です。そこで、この耐性菌を殺す「最後の切り札」として登場したのがバイコマイシンですが、それも細菌の進化によって効かなくなってしまい、又、それを殺す薬が開発され、やがてその薬にも耐性を持つ菌(バイコマイシン耐性腸球菌)が登場したのです。要は、細菌と薬の追っかけごっこになってしまうのです。

 

結核は、ストレプトマイシンという抗生物質が出来たお陰で死亡率が低下しましたが、現在でも根絶できないのは、結核菌が耐性菌になってしまったからなのです。

 

耐性菌は、院内感染の新しい原因菌となっているのです。

 

抗生物質が効くからと言って、不適切な使用・乱用が耐性菌を生み出した結果かもしれません。抗生物質は、医者にとって儲かる薬ですが、今一度自分自身の免疫を信じて、出来るだけ自力で治すよう努めることが肝要だと思います。

 

ペスト菌はノミからクマネズミに移り人間へと感染させますが、感染したクマネズミの多くも死んでしまいます。

 

コレラは汚染された水、黄熱病は蚊が媒介者、エイズはチンパンジ-や猿からで、不思議なことに、天然痘は牛や馬それにラクダの体内で増殖したものが人間に感染しますが、発症するのは人間だけのようです。麻疹(はしか)も羊やヤギから人に感染しますが、羊やヤギは発症しません。

 

ついでに、SARSはジャコウネコからヒト、MARSはヒトコブラクダからヒト、新型コロナウィルスはコウモリ或いはセンザンコウからヒトと言われていますが、確実なところはよく判っていません。新型コロナウィルスが厄介なのは、感染した人から人だけなら三密を守っていればこれほど感染者は出ていなかったはずですが、このウィルスは人が触ったモノからヒトへと感染することです。

 

ウィルスは、ヒトの細胞に入って自分のコピ-を作らせ、作らせられた細胞が破裂したとき大量のウィルスを放出し、他の細胞に侵入してしまいます。要は、細胞の機能を乗っ取ることで活動します。そこで、細胞の機能を止めてしまえばウィルスの活動を阻止することが出来るので、これに目を付けた薬が開発されました。

 

ところが、問題は細胞の機能を止めてしまうと、細胞に強い障害を受けてしまうのです。だから、抗ウィルス薬の開発はとても難しいのです。

 

抗ウィルス薬として有名なものにインタ-フェロンがありますが、やはり副作用の強い薬です。

 

インフルエンザ・ヘルペス・B型・C型肝炎・HIV・AIS等、多くの治療薬が製品化されていますが、その他のウィルスに対しては現在、残念ながら特効薬はありません。

 

私は子供のころ、父親に頭からDDTをぶっ掛けられた記憶があります。

 

DDTは、帰国軍人によってもたらされたシラミ退治の薬として、戦後、GHQから援助された有機塩素系の殺虫剤です。

 

熱帯地方で流行した黄熱病・マラリアが蚊(ハマダラカ)によって媒介されたことから、蚊の駆除剤としてDDT散布が行われました。ただ、この殺虫剤は分解しにくいので、食物連鎖を通じて生体濃縮されることがわかったため、製造・輸入が我国では禁止されています。

 

スリランカでは年間250万人のマラリア患者がいましたが、DDTを使用したら感染者数が31人にまで減りました。しかし、副作用によって、DDTの使用は禁止され、その後は5年足らずで年間250万人のマラリア患者を出してしまったのです。

 

DDTのように、少数の人に副作用が出たために薬の使用禁止をしたことが原因で、数多くの死亡者を出すことになってしまいました。

 

現在、中国とインドで製造され、発展途上国にマラリア対策に使われています。DDTに替わる殺虫剤は現在もありません。

 

薬を使ったことによる副作用で患者から訴えられ、敗訴した結果膨大な損害金を払うことになった製薬会社は、抗菌薬・抗ウィルス薬の製造に慎重になっています。創らなくなったという意味ではなく、膨大な開発費の上に将来発生する損害金を上乗せて販売せざるを得なくなったのです。

 

キノホルム(スモン病)、ソリブジン(薬害エイズ)、イレッサ(抗がん剤)、タミフル(インフルエンザ)、子宮頸がん(HPV)ワクチン等、薬害の歴史は枚挙にいとまがありません。本来、副作用のない薬はあり得ないのに。

 

治療薬は開発されて、厚生労働省の認可を得るまでに少なくとも1年は必要とされています。患者に投与され、それで回復したとしても再発がないとは言い切れません。

 

数十万人単位で投与すれば、必ず副作用で苦しむ人が出てきます。効く薬は必ず副作用があることを覚悟して服用すべきで、製薬会社は、告知していない副作用に対して損害賠償の義務があるのは致し方ないでしょう。

 

全ての年齢層で、男女の別なく、民族も生活・食習慣も違い、妊娠、持病、それに他の薬との飲み合わせ等に関係なく効く薬で、しかも副作用がない薬はあり得ないと思います。

 

効く薬は必ず副作用があり、副作用がない薬は効かないのです。

 

プラセオ効果を狙って小麦粉を投与しても、小麦アレルギ-患者には重大な副作用をもたらします。

 

DDTに替わる殺虫剤は現在のところないにも拘わらず、少数の人に災いした副作用のおかげで、大勢の人を救う薬が禁止されることはあってはならないと思うのですが、現実は論理が通るとは限らないのです。

 

製薬会社の肩を持つ訳ではありませんが、採算の取れない少数の難病患者に向けた薬も開発しています。利益を求めるのは仕方ありませんが、患者の苦しみを我が苦しみとして共有できる使命感がなければ創薬は出来ないと思います。

 

一方で、病気だからと言って安易に薬に頼る人にも問題があります。

 

4. 治療薬とワクチン

 

人類は、生命誕生の時から病原菌やウィルスと戦ってきた極めて長い歴史を引き継いでいます。それが免疫系と呼ばれるものです。

 

インフルエンザだって、タミフルやリレンザ等の抗ウィルス薬を使わなくても人間は自らの力で或る程度治るように出来ています。

 

呼吸が苦しい、意識障害がある、高熱が引かない等の重度の症状があれば別ですが、通常の風邪ぐらいの症状であればヒトの免疫で治るように出来ています。

 

抗生物質、抗ウィルス薬を使えば、薬が細菌やウィルスの働きを弱めるため、一見治ったように見えますが、根本的治療にはならないのです。

 

病気が治るということは、免疫力が働いて抗体ができた場合だけだと私は信じています。

 

麻薬・覚せい剤患者がよい例で、薬を外から入れると脳の中にセロトニン或いはド-パミン等の脳内麻薬が強制的に放出されるから気持ちがよくなりますが、薬は脳の働きを抑えてしまうため、脳は自分自身で脳内麻薬を作ることを止めてしまいます。だから、外部から薬を入れると脳は薬を入れろと必死に命令します。命令に反すると痛みや気分が落ち込むか悪くなり、我慢出来なくなってしまうのです。こうして麻薬・覚せい剤は常習化され、継続して入れていると服用を増やさなければ効かなくなってしまい、いずれ重い副作用に苦しめられていくことになるのです。

 

抗生物質も抗ウィルス薬も原理は同じで、薬を使って治療した病気は抗体を作りません。抗体がないと、再発する可能性があるのです。

 

感染したら、自分で抗体を作って自ら治療しないと完全治癒はしません。

 

病気と闘うためには血液に十分酸素を送り、自ら免疫を高めるしか方法がないのです。治療薬は対処療法に過ぎないことが多いのです。

 

天然痘が根絶した理由がそれを物語っています。

 

天然痘が猛威を振るった時代、牛痘にかかった人は天然痘に罹らないことからウィルスを発見しました。患者の膿疱から取った膿を薄めて人に移し、抗体を作って病に罹らない体にするのです。

 

このウィルスを発見したのがイギリスのジェンナ-で、彼は牛から取った牛痘をワクチンとしたのです。このワクチンを広めたことにより、人類は集団免疫を獲得し、1977年に天然痘はこの世から完全に根絶出来たのです。

 

新型コロナウィルスの治療は、イギリスのジョンソン首相が仄めかしたように、国民の多くの人(国民の60%)が集団感染(アウトブレイク)して、集団免疫ができるまでは根絶しないかもしれません。

 

しかし、この方法だと感染率が1%とすると60億人で6千万人の感染者が出ることになってしまいます。日本人の場合だと、1億2千6百万人で120万人の感染者が出ることになります。

 

感染者を抑えるためには、治療よりも予防が先決です。非現実的ではありますが、2週間程度鎖国し、世界中都市封鎖を行って人々を完全隔離すればかなりの効果が得られるはずです。

 

現実論としては、結局、人間の血液以外治療薬はないのですから、ワクチンができるまで、個人個人の免疫力を高めるしかないのです。感染者して重症化する人は免疫力の弱い人です。高齢者・基礎疾患のある人はもともと免疫力が弱い人達ですから、極力人との関係を断つしかありません。

 

それでは、免疫力を高めるにはどうしたらよいのでしょうか。

 

それは、体を温めて血液の循環を良くし、血液の中の免疫機能に頼るしかないのです。

 

血液の循環を良くするには体を温めることが重要で、体を冷やさない食事(根菜類を摂り、冷たいものを飲まない)と適度の運動、風呂で体の芯まで温め、一日20分は太陽の光に当たり、血圧降下剤を多用しない等、血液循環を良くして抵抗力を高めることです。

 

薬で治療すれば症状は無くなるかもしれませんが、抗体のない体のままですから、再感染の可能性があるのです。自分の免疫で治した場合は、感染したとしても抗体があるので軽症で済むのです。

 

安保徹先生(日本自律神経病研究会終身名誉理事長、2016年12月逝去)は、「病気にならないためには、交感神経と副交感神経のバランスが非常に大事で、このバランスが壊れると免疫力が落ちて様々な病が発症する」と著書で繰り返し書かれています。ストレス、腸内環境、低体温に気を付ければ血流が良くなり、特に風呂、笑う、適度の運動、十分な睡眠によって副交感神経優位の生活環境を保てば免疫力が高まります。この方法は、副作用がなく最も自然な予防・治癒方法であり、人類誕生以来、細菌とウィルスとの長い戦争で人間が獲得した獲得免疫の進化の歴史である」と仰っています。

 

細菌とウィルスが血液に入ると、血液中の免疫システムがこれらと闘い、闘いながら相手を分析し、勝つと次回に侵入された時の防御として抗体を作ります。

 

この抗体は、免疫グロブリンと呼ばれる蛋白質で出来ており、「lg」と略されています。

 

この「lg」は5種類(lgM、lgG、lgA、lgD、lgE)ありますが、コロナにとって重要なのは、「lgM」と「lgG」です。前者は感染初期に闘い、後者は感染中期に闘います。ですから、抗体検査は、「lgM」と「lgG」を測定すればその人が過去に感染したか否かが判ります。これが、抗体検査と呼ばれるものです。

 

  • lgMは、細菌やウィルスに感染するとおよそ7日目に生成され、最初に作られる抗体です。

 

これを調べれば、どんな感染症に罹っているかわかります。

 

  • 感染しておよそ10日目以降に作られるlgGは、lgMが作られた後に出来る抗体です。血液中に最も多く含まれる免疫グロブリンです。

 

lgGがあれば、感染後期か既に治癒した可能性があるということです。

 

問題なのは、感染者の抗体反応については、抗体検査の臨床的価値がまだ明らかになっていない点です。

 

新型コロナウィルスが厄介なことは、このウィルスのことはまだよくわかっていないことが多いのです。例えば、

 

  • 季節性なのか否か
  • 感染してから症状が出るまでの時間が長い
  • 感染力が強いが、致死率は低い。その代わり、ウィルスは体内に長期潜伏する可能性があることと、免疫を獲得できない人がいる
  • 軽症や無症状の例が比較的多いが、重症化するまでに他人に感染させてしまう。この点は非常に重要なことを示唆しています。軽症や無症状の人は、活動が活発で、ヒトに感染させやすいことです。
  • 更に、免疫期間が長いのか短いのか。仮に免疫を獲得してもウィルスが突然変異すれば、再感染する可能性がある。

 

更に厄介なことは、このウィルスは、人から人だけでなく物(ウィルスが付着した物)から人へと感染するために感染力が非常に強い点です。

 

要するに、人間が制御できない史上最強のウィルスだということです。

 

但し、こんな強いウィルスにも弱点があります。

 

それは、くどい位言われている、三密を避け、社会的距離を保ち、手洗い、うがい、マスクの着用をすることにより、かなり感染が防げるのです。

 

治療薬

 

インフルエンザに抗生物質を使う人がいますが、抗生物質は細菌には効きますが、ウィルスは細胞がないから効きません。

 

ウィルスは、S型とL型があるといわれています。

 

ウィルスの遺伝子情報は、DNA(デオキシリボ核酸)かRNA(リボ核酸)のどちらかしか持っておりません。

 

DNA型は、S型と呼ばれ、感染力は弱いが毒性が強く、RNA型は、L型と呼ばれ感染力は強いが毒性が弱いがとされています。

 

新型コロナウィルスは、RNA型なので感染力が強く毒性は弱いはずなのですが、健康な若者でも重症者や死亡者が出ていますので毒性が弱いと断定することは出来ないようです。

 

4月7日、安倍総理は、国家非常事態宣言を出し、患者が望めば医療機関の承認を得て『アビガン』を服用できることとしました。

 

更に、米で開発された『レムデシベル』が厚生労働省によって「特例承認」されました。

 

「な-んだ! 既に治療薬があるじゃないか! それにこれからもっと治療薬が開発され、収束宣言は近い」と思っている人に少し注意が必要です。

 

現在、世界各国で治療薬が開発されていますが、実は、『アビガン』、『レムデシベル』は、新型コロナウィルスの治療薬として開発されたものではなく、「既存薬の転用」の効果を試して結果を見ている段階なのです。

 

『アビガン』は、インフルエンザ・ウィルス薬で、ウィルスのRNAポリメラ-ゼを阻害することによってウィルスの遺伝子のコピ-そのものを阻止する効果があるため、感染初期の段階で投与されるものです。

 

『レムデシベル』は、エボラ出血熱の治療薬で、これもウィルスのRNAポリメラ-ゼを邪魔することによってウィルスの増殖を防ぐ薬です。

 

臨床試験の段階ですので、安全性・有効性が確立した治療薬ではありません。治療薬がない現在、最後の頼みの綱としてしか扱われない薬なのだということです。コンパッシュネ-ト使用(患者に対して他に治療の選択肢がない場合に、通常なら処方を認められない医薬品を処方することを認める使用)として、『アビガン』を安倍総理が医療機関の承認を得て服用できることとし、アメリカでは『レムデシベル』に期待を掛け、タイでは『カレトラ』の臨床研究が進んでいますが、今のところ、『カレトラ』は臨床的改善が得られていないようです。

 

コロナ治療薬がない中、どんな治療薬が処方されているのでしょうか。

 

軽症の場合は、オルベスコ(ぜんそくの薬)で呼吸を整えて症状を緩和しますが、対処療法で治療薬とは言えません。

 

初期治療には、先ほどの『アビガン』、『イベルメクチン(商品名、ストロメクト-ル)』があります。

 

『アビガン』は、富山化学工業がインフルエンザ治療薬として開発したものです。

 

インフルエンザ治療薬としては認可されていますが、コロナ治療薬としては認可されていません。その理由は副作用があり、サリドマイドと同じぐらい催奇性(奇形児が産まれる)があるとされているからです。

 

しかし、若い人と妊婦に処方しなければ問題ないはずですし、治験段階とはいえ中国ではかなりの実績があったように聞いています。更にこの薬品は、RNA合成を阻害する抗ウィルス薬ですので、耐性ウィルスが出来ません。

 

『アビガン』は、耐性ウィルスが出来ないために、有効性が維持できると考えられるのです。

 

日本で開発された薬ですので一刻も早く認可してほしいのですが、問題は治験の「時間切れ」によって、後発薬(ジェネリック薬)を許してしまっています。

 

中国の浙江海正薬業は既に臨床試験が終わり、輸出向けにかなりの勢いで増産体制に入っています。

 

『イベルメクチン』は、北里大学の大村智(特別榮譽教授)先生が開発した寄生虫の駆虫薬(この薬でノ-ベル生理学賞・医学賞を受賞した)で、抗ウィルス剤としての効能が認められ、コロナの初期治療に試されています。

 

新型コロナウィルスの潜伏期間は平均5.1日、感染してから発症までが11.5日で、初期の段階にこれらの治療薬を処方すれば重症化が防げると言われているにも拘わらず、PCR検査で陽性反応が出ても、発熱などの症状がない場合は「自宅待機」か「ホテル待機」させられてしまいます。

 

これによって、初期の患者さんが重症化したことが問題になりました。

 

重症化した患者さんには、中外製薬のアクテムラ(一般名トシリズマブ)がサイトカインの作用を阻害する働きがあることから使われています。この薬は、免疫異常の治療薬で、リュウマチ系の薬です。

 

「既存薬の転用」ではなく、直接コロナ治療を対象としたものが血清療法で、コロナ感染して自然治癒した人の血漿を直接患者の血液に注入する方法です。要は、免疫療法です。ただ、この血漿法は、血漿を大量に手に入れることが出来ない難点があります。

 

韓国では、71歳の男性(基礎疾患なし)と56歳の女性(高血圧患者)の重症患者に投与して完治したという報告がありました。但し、この方法は、大規模な臨床試験が行われていないので、現在のところ安全性については疑問があるようです。

 

武田薬品工業が新型コロナウィルス治療薬として「免疫グロブリン製剤」を欧米企業と連携して開発していますが、早くて1年先になるらしいのです。

 

私が最も期待をかけているのが、東京大学医科学研究所の井上純一郎教授と山本瑞生助教が、すでに国内で開発されていた『ナファモスタット』が新型コロナウィルスに有効(細胞への侵入を防ぐ効果がある)だと突き止めたのです。

 

この薬は他の病気に使われているので、安全性に問題はないそうです。

 

ワクチン

 

ワクチンには、従来型の生ワクチン(病原体を弱めて使用)と不活性ワクチン(病原体能力をなくして使用)、それに次世代型の遺伝子ワクチンがあります。

 

生ワクチンは、免疫力は強いが副作用も強いのですが、僅かに発症リスクが残るために誰にでも使用できるとは限りません。不活性ワクチンは、免疫力は弱く持続性が短いが、生ワクチンほど副作用ありません。

 

一方、遺伝子ワクチンは、病原体のDNAとRNAの遺伝子物質を人工的に合成して使用する画期的方法で、免疫力と持続性は生ワクチンと同様優れていますが、ヒトへの実用はまだありませんので、どれだけ副作用があるのかわかっていません。ワクチンの製造時間を短縮するために考え出されたものです。

 

ワクチンは、体に抗体を作るので予防法としては最良の方法ですが、問題は時間がかかりすぎることと、その間にウィルスが進化して変化するため、ワクチンが効かなくなることがあるのです。

 

全てのウィルスが進化するとは限りません。麻疹(はしか)のウィルスは進化しませんし、このウィルスは、人にしか移らないのです。

 

もう一つ問題なのは、ウィルスの核酸を覆うたんぱく質の殻(カプシド)の周囲を囲むエンベロ-ブ(無いものもある)が強いとワクチンが効かない可能性があるのです。

 

ウィルスの正体についてはまだよくわかっていないことが多いのです。

 

感染しない生活環境を維持することが最も必要ですが、感染しても軽症で済むようにするためには、免疫力を高めるか、ワクチンを投与するか、感染して自分自身の体内に抗体を作るしかありません。

 

5. 細菌とウィルスが歴史を変えた

 

有史以来、歴史に残る4大感染症は、ペスト、コレラ、黄熱病、天然痘でした。

 

ペスト、コレラは細菌感染で、黄熱病、天然痘はウィルス感染によるもので、細菌感染は抗生物質で或る程度治るようになりました。或る程度というのは、抗生物質は耐性菌を生むからで、結核が現在でも根絶出来ないのは結核菌が耐性菌になってしまったからです。

 

感染症は、ネガティブな面もありますが、歴史を大きく変えた側面があります。順を追って少し見ていきましょう。

 

  • ペスト

 

6~7世紀のヨ-ロッパでは、東ロ-マ帝国とササン朝ペルシャが当時の2大強国でした。トルコのイスタンブ-ルにあるハギア・ソフィア聖堂を再建した東ロ-マ帝国皇帝ユスティニアヌスは、当時全盛期にあったササン朝ペルシャのホスロ-1世と2世に苦戦を強いられていました。しかし、両者が覇権を争っていた時にペストが流行り、両国は瀕死の状態になってしまいました。

 

首都のコンスタンチノ-プル(現在のイスタンブ-ル)では1日に1万人が死亡し、ロ-マ帝国崩壊の一因となったと言われています。これが第一波で、「ユスティニアヌスのペスト」と言われるものです。

 

当時の人口の50%が死亡したのです。

 

ペスト菌は元々ヨ-ロッパにはいなかったのですが、この時のペストはエジプトからペルシャにもたらされたようです。

 

ペストの媒介者は、ノミからクマネズミでした。

 

ところが、砂漠のためクマネズミがいなかったアラビア半島のイスラム教徒は、この機に乗じて短期間のうちに勢力を伸ばし、中東のみならず、北アフリカ、スペインまで領土を拡大していったのです。

 

2大強国に挟まれながら、当時弱小であったイスラム勢力がペストのおかげで、中東だけでなく北アフリカ・スペインまで短期間でイスラム教を広めていったのです。ペストが猛威を振るわなかったら、イスラム教が世界宗教にならなかったかもしれません。

 

又、11~12世紀にも、十字軍の遠征により西アジアから船に乗ってきたクマネズミがノミと共にペスト菌をヨ-ロッパにもたらしました。

 

多くの民が神に助けを求めて教会に押し寄せましたが、ロ-マ教皇はペストを克服できませんでした。それどころか、聖職者は教会から逃げ、教皇の信頼は失墜しました。

 

農奴も感染したので農奴制が崩壊し、英・仏100年戦争も一時休戦しました。ペストの脅威は中世を終わらせる勢いだったのです。

 

第二波は、14世紀に中国で大流行したペストがモンゴル軍に感染し、モンゴル軍が中央アジア~西欧への侵攻によってヨ-ロッパ全土にペストをもたらし、当時の人口の60%、5千万人の人が死亡しました。この時の媒介者は毛皮についていたノミだったそうです。

 

この時は、ヨ-ロッパだけではなくオスマン帝国にも流行し、19世紀まで続いたそうです。

 

アジアでも、香港から世界に広がりを見せ、中国とインドでは1200万人の人が亡くなりました。

 

ペストの流行により、その当時の人々はどんな精神状態に追い込まれたでしょうか。

 

  • 自暴自棄になって欲望の追求や浪費して身を崩す者。
  • 多くの信者は懺悔して神に頼ったが、神は助けてくれなかった。
  • 犯人捜しをした結果、ユダヤ人が井戸に毒をまいたとして、ユダヤ人虐殺  に加担した者。

 

神にも政府にも人々は完ぺきに見放されたのです。頼るすべがなく生きていかねばなりませんでした。

 

ペストの原因は、1894年まで誰にも分らなかったのです。だから、ペストの感染予防は、新型コロナウィルスと異なり、空気感染すると考えられていましたので、換気は行わず、肌を空気にさらすと危ないということで、風呂も禁じられていました。

 

陸上交通では、感染拡大を恐れて各都市が発行する「衛生通行証」がないと他都市に入れないようにしました。この「衛生通行証」が現在のパスポ-トの元になったのですが、現在、新型コロナウィルスで都市封鎖が行われている国では、外出する場合には「通行許可書」のようなものが必要とされております。歴史の記憶が生きているのです。

 

ペストの原因であるペスト菌を発見した人が、新千円札の候補者である北里柴三郎であることは承知のとおりです。彼は、ペスト菌を日本から根絶して日本での大流行を阻止した偉大な功績者です。

 

又、新型コロナウィルスが中国或いはアメリカで、細菌兵器として開発されたものだと云う不確かな情報がSNSで話題になりました。日本でも、中国或いはアメリカを非難する論調がありましたが、1941年の関東軍731部隊の細菌研究は、ペストを中心に人体実験・細菌の散布実験が中心に研究されていたことを忘れてはなりません。

 

  • コレラ

 

コレラは19世紀初頭から20世紀にかけて、アジア・中東・中南米の発展途上国のみならず、ヨ-ロッパと南北アメリカにも広がり、世界的規模で猛威を振るいました。

 

トイレの劣悪な環境によって水が汚染されて、ビブリオ・コレラ菌による下痢症状を引き起こしたのです。極度の脱水は、人間を「ひもの」状態にしますが、治療としては点滴か経口補水液で大体治るとされています。しかし、そんな治療すら貧困故に出来ない国で飲料水の、汚染によりコレラは流行したのです。

 

中世ヨ-ロッパでもトイレの劣悪な環境は、今とは想像すらできない状況にありました。排便・排尿は2階の出窓から道路に捨てたので街には悪臭が漂い、井戸水や河川の汚染により感染症を引き起こしたのです。

 

実は日本でもコレラは江戸時代には何度も流行していました。明治12年と明治19年には、10万人以上が感染しました。当時は、飲料水が井戸水であったことや、トイレが汲み取りであったことが関係していると思われます。

 

コレラは、19世紀中に6回もパンデミックを引き起こし、2013年に中米で7回目のパンデミックを起こしたのです。

 

水道水を塩素消毒することが一般的になったのは、戦後GHQによる感染症対策として始められ、公衆浴場やプ-ルにも塩素消毒が行われ、感染リスクは著しく低下しました。現在、日本人がコレラに罹るのは海外渡航に限られ、発症者は年間10人以下、死亡者数はゼロとなっています。

 

  • 黄熱病 

 

黄熱病は熱帯性のもので、蚊による媒介だと分っているから、蚊の駆除とワクチンで予防がある程度可能になりましたが、予防は出来ても未だ特効薬はありません。

 

熱帯地方にだけ発生する黄熱病が何故西欧に入ったのでしょうか。

 

それは、ヨ-ロッパ人による奴隷狩りだといわれています。原住民と動物が調和している社会に、サルと蚊の関係をよそ者が調和を壊し、西欧に持ち込んだものです。

 

  • 天然痘

 

紀元前、エジプトのミイラ(ラムセス5世)の肺と肝臓に、ペスト菌や天然痘ウィルスに罹った痕跡が見つかりました。

 

その後、AD165年にエジプトからユ-フラテス川を遡って天然痘がパルティア王国(現在のイラン・イラクの辺り)にもたらされました。

 

ユ-フラテス川上流にアダムとイヴが過ごした楽園とされているアルメニア(当時、ロ-マ領)をパルティア王国が占領したため、ロ-マとパルティアが戦争したのです。

 

この時のロ-マ皇帝は、五賢帝最後のマルクス・アウレリュウスで、キリスト教は迫害を受けていた時代です。

 

戦いはロ-マ軍の圧倒的勝利かと思われた矢先、ロ-マ兵の中で天然痘が蔓延したためパルティア王国に勝利がもたらされたのです。

 

天然痘はラクダが媒介し、隊商の民であるパルティアは長年天然痘に苦しめられ、免疫抗体が出来ていたのです。ロ-マ兵が帰国すると、ロ-マは500万~750万人の感染者を出してしまいました。

 

ロ-マ人たちは、自分達の神(オリンポス12神)に祈りましたが治りません。クリスチャンは、自分達を迫害した人たちも親切に看病し、「あなたは救われます!」と祈りました。その後、キリスト教に対する見直しが行われ、ロ-マ帝国全土がキリスト教に改宗されることになったのです。

 

又、有名なところでは、スペインのコルテットがアステカ帝国を滅ぼし、ピサロがインカ帝国を滅ぼしたとされていますが、実際、両帝国を滅ぼしたのは天然痘だったと言われています。

 

スペイン人は既に抗体を持っていたのですが、アステカ帝国やインカ帝国の住民達は、スペイン人だけが罹患しないのは自分達の神よりキリストの神の方が強いと信じたのです。そのため、帝国の兵士に寝返りが多く出て、スペイン人に味方したことが敗北の主な要因だと言われているのです。このことにより、南米は全域でキリスト教に改宗したのです。

 

日本でも、奈良時代に仏教を取り入れ、朝鮮半島から僧や仏像製作者・仏具技術者が日本に送り込まれ、逆に、遣隋使、遣唐使によって日本からも多くの人達が大陸に渡りましたが、不幸にも人の移動により天然痘まで我が国にもたらしてしまったのです。

 

光明皇后はこの天然痘(当時は天然痘と認識されていなかった)を平癒するために全国に国分寺を建て、総本山として奈良の東大寺を建立しました。仏教はこれ以降、病気を治してくれる有難い神様として受け入れたのです。

 

本来、仏教には御利益の要素は一つもありません。悟りの宗教は伝来した時から御利益宗教になったという点では、日本の仏教は亜流でした。

 

神仏習合が日本人の文化の原点であることを考えると、ウィルスは、日本文化に大きく貢献したのかもしれません。

 

6.ウィルスの役割

 

キリンの首はなぜ長いのか。

 

進化の過程でキリンの首が長くなったとすれば、首の短いキリンと現在の首の長いキリンの中間のキリンが存在するはずであるが、そんなキリンの化石は発見されていません。

 

そこで、「進化は、ウィルスの感染によって起こる」と云う、新しい進化論説があります。無論通説ではありません。

 

それは別として、ウィルスの特性を逆手にとって、がん治療に挑む研究がなされています。

 

正常な細胞は、ウィルスに感染するとたんぱく質を作るのを止めてしまいます。止めてしまうと、自分(細胞)もウィルスも両方死んでしまうことになります。両方死ぬから感染拡大を防いできました。誠に、細胞は素晴らしいシステムを持っていることが分ります。

 

ところが、ウィルスにとって細胞が死ぬと自分も死ぬから、そうはさせまいとして細胞内に自滅阻止の遺伝子を入れて増殖しようとするのです。

 

ウィルスは本当にしたたかです。

 

細胞にはアポト-シス(細胞の自滅機能)がありますが、がん細胞にはアポト-シスが欠けているのです。

 

ウィルスがいないとがん細胞は増殖し続けますが、がん細胞にウィルスが入ると、がん細胞は自滅する能力を持たないので、ウィルスが増殖してがん細胞に大きなダメ-ジを与えてしまいます。この機能を利用したのががんのウィルス療法で、現在は皮膚がんの治療薬に用いられていますが、他のがんにも効くよう研究が待たれます。

 

ウィルスをがん治療に利用する発想はすごい!

 

7.平和ボケの日本

 

参議院議員の佐藤正久氏(ヒゲの隊長)によれば、感染症が国を脅かすような事態となった時、その感染症が、

 

  • 生物兵器と認められれば防衛省
  • バイオテロと認められれば警察庁
  • 感染症と認められれば厚生労働省

 

の所轄だとテレビで説明されました。

 

ダイヤモンドプリンセス号のクラスタ-感染が判明した時、政府は③の感染症だと判断したはずです。

 

ですから、厚生労働省が先頭に立って船内の感染症に対応しました。

 

ところが、大量の感染者を受け入れる病院がないため、軽症患者を船内に留め、中等症以上の患者117人を自衛隊中央病院が受け入れました。

 

所轄外だからと言って責任を回避する縦割り行政の弊害はありませんでした。逆の見方をすれば、自衛隊だから国防意識から引き受けたのかもしれません。今回、生物兵器だったとしたら、厚生労働省は防衛省と共同で事態に対処できたでしょうか。

 

国防を自衛隊任せにしている弊害が露呈したのではないでしょうか。

 

国難が生じたとき、各省庁が一致団結して事に当たるという認識が今まで欠けていたのがはっきりしたと思います。

 

日本以外の国は、いち早く国防の観点からロックダウンをして国民の命を守ることを優先させました。日本は、憲法上の制約から人権を守ることを優先した結果、自粛という国民の自発的防衛手段に任せてしまいました。

 

海外で、日本が不思議な国と思われているのは、感染者の数と死亡者の数が極端に少ないことと、呼びかけだけで罰則なしの自粛だけで国民の大半が行政のお願いに従ったという点です。

 

政府は、国民の意識の高さを知っていたのでしょうか。そんな意識の高い国民に対して、命より人権を優先させてしまったのは残念です。

 

国家というのは、国民の生命・財産を守るために存在するのです。国民の生命・財産を守らなければ、国家は必要ありません。

 

韓国は、SARSの経験があるからいち早く対応出来たといわれていますが、それだけではなく、韓国は休戦しているだけで未だに戦争中なので国防意識が日本と全く異なっているのです。

 

韓国は、1968年にマイナンバ-制を導入しています。日本はいまだに導入できていません。個人情報保護が大きな壁となっているからです。

 

このため、10万円の一律給付が迅速にできないのです。

 

韓国がマイナンバ-制を導入したのは、北朝鮮の「青瓦台テロ」を経験してスパイをあぶりだすために、国防の観点から導入したのです。我が国がスパイ天国だといわれているのは人権を理由にこうした制度が進まないからです。

 

今回のコロナ騒動で、バイオテロの脅威が現実味を帯びてきたことです。

 

現に、人工ウィルスは、2002年と2011年に作られています。

 

今度作られるウィルスは、「COVID―19」から「COVID―20」かもしれません。

 

人工ウィルスは、作ることは出来ても治せないという欠陥があります。

 

又、開発中に漏れるリスクがあります。

 

しかし、核兵器よりもコストが安く、敵に与えるダメ-ヂは人命だけではなく国家の命まで破壊できるのです。

 

生物兵器の媒介は、蚊ではなく「ドロ-ン」かもしれません。

 

核拡散防止も大事なことですが、テロ集団は、低コストの人工ウィルス製造に向かう可能性があるのではないでしょうか。

 

世界中の国がコロナの被害で国難に当たっているとき、4月2日に中国の巡視船がベトナムの漁船に体当たりして沈没させました。

 

4月13日に、米の空母「セオドア・ル-ズベルト」の乗組員がコロナ感染で身動きが取れないのを見越して、中国の空母「遼寧」が南シナ海で訓練を行いました。

 

5月8日~5月10日まで、領海侵入した中国海警局の公船4隻のうち2隻(3千トンと5千トンクラスの巡視船)が日本の漁船を追いかけています。漁船に損害はなかったものの、この時期に操業妨害するとは政府も漁業関係者も想定外だったはずです。

 

軍事だけでなく、パンデミックで疲弊した先進国の株を安く買い取って、堂々と中国に先端技術取り入れることが出来るのです。株価低迷した大企業の株式を買い取る絶好のチャンスといえる時期に入ったのです。

 

例えば、日産が中国の東風汽車に買収される可能性が報道されましたが、コロナにより、「チャイナ2025作戦」は、人民解放軍にとって株式の買い取りという簡単な手法で達成出来ることとなったのです。

 

相手のピンチは自分にとってのチャンスという考え方は、「孫氏の兵法」でありますが、武士道や西欧の騎士道とはかけ離れています。

 

政府はこれに対し、国防上問題のある企業の株式買い取りを10%から1%に引き下げ、国防上の機密及び技術(特に半導体)の海外移転を防止した対策を取り始めました。

 

しかし、マスク・防護服・人工呼吸器等の医療関連が国防上の問題とは認識されていなかったため、極端な需要不足にから医療崩壊危機を招きました。

 

価格競争の経済合理性から生産拠点を中国に移した結果、今回のマスク不足に全く対応できなかったのは誠に残念です。無論マスクだけではありません。

 

官民挙げて平和ボケだったことを反省して、アフタ-コロナの対策を考えて頂きたいものです。

 

8.おわりに

 

戦後70余年、世界で大きな戦争は無くなりました。

 

歴史から見ると、これだけ長い間平和だったことは殆どありません。

 

科学技術を発展させることによって、「繁殖・富・健康・寿命」等に大きく貢献しただけでなく、さらに人類は、遺伝子操作によってこれらをある程度コントロ-ル出来るようになったのです。

 

ところが、人類の誕生から現在に至っても未だコントロ-ル出来ないものがあります。

 

それは、世界の総ての宗教の共通課題である「人間の欲望」です。

 

宇宙を創造した神でさえ手に負えないものです。戦争は「人間の欲望」の表象です。しかし、過去の戦争と異なり、現在、先進国同士が戦争すれば、人類が滅亡する危機になることは誰でも知っています。

 

もう一つコントロ-ル出来ないものがウィルスと細菌です。

 

ペストは、6世紀に東ローマ帝国の首都、コンスタンチノ-ブルで一日1万人の死者を出し、14世紀のヨ-ロッパでは全人口の1/4にあたる2千5百万人が死亡しました。

 

天然痘は、過去の累計では人類の1/3がこのウィルスに殺されました。

 

コレラは、過去7回もパンデミックを起こし、最後の7回目はつい最近の2013年に起きました。この感染者は現在でも年間130万人~400万人いて、そのうち21,000人~143,000人の人が死亡しています。

 

インフルエンザ・ウィルスによる死亡者のうち、スペイン風邪(注)は当時(1918年)の世界人口18億人のうちの4千万人が死亡、1957年のアジア風邪は2百万人、1968年の香港風邪は百万人死亡しているのです。

 

1981年に発症が確認されたエイズは、2千5百万人も死者を出しました。

 

感染症によるパンデミックは、自然災害であると同時に、得体のしれない細菌・ウィルスとの出会いで、何時の時代も「未知との恐怖の遭遇」なのです。

 

スペイン風邪(注)

 

スペインは、風邪に祟られている。スペイン風邪はスペインで発生したものではなく、独・仏・米で流行していたが、第一次世界大戦への影響を恐れて参加国が国民に報告しなかっただけのことであり、当時中立国であったスペインは影響なしとして正直に報道したため、スペインが起源とされてしまったのです。

 

政府の対応は一早く非常事態宣言を出したにも拘わらず、ヨ-ロッパではイタリアに次いで2番目に感染者が出てしまいました。対応が速いだけでなく、規制も厳しく通夜・葬式迄禁止しています。

 

今回の新型コロナウィルスは、4月1日現在、世界の感染者は87万人、死者4.3万人でありましたが、5月13日、1ケ月半足らずで世界の感染者は4,442,000人、死者302,418人になり、感染者は5倍、死者は7倍になりました。

 

それでも感染者数・死亡者数はこの4大感染症に比べれば1~2桁少ないのです。

 

重要な点は、感染症がグロ-バル化により地球規模で瞬時に広がり、開発途上国だけでなく先進国が中心となって蔓延したことです。

 

感染予防のため移動が制限されたことによる経済の打撃が、「今まで経験したことがない」過去最大の経済的損失を招いたのです。

 

このウィルスが、開発途上国の風土病で、感染拡大がなければこの程度の死亡者数では殆どニュ-スにもならなかったでしょう。

 

多くの感染症は、現在の新型コロナウィルスの猛威よりはるかに多いのに、先進国ではニュ-スになりません。

 

発展途上国で起きた感染症による死者、テロによる死亡者、内戦による死亡者は日常茶飯事のことでニュ-スにならないのです。

 

シリア・アフガニスタンで、テロにより一日に20人死者が出てもニュ-スになりませんが、アメリカをはじめとする先進国で、テロによる死亡者が20人出れば間違いなくトップニュ-スになります。

 

無論、日本でも同様の扱いで、仮に世界4大感染症のほかに、エボラ出血熱、HIV、SARS、MARS等の感染者が日本のどこかで10人も出ればトップニュ-スになるでしょう。

 

要するに発展途上国と先進国では人間の重み(体重ではない)が全然違うということなのです。

 

マネ-・ゲ-ムに使うお金を、景気対策に使うお金の一部を発展途上国の飲料水改善に向け、民主主義を押し付けて他国の自尊心を傷つけることを止めれば、発展途上国の死者は激減し、先進国は今より嫌われることは無くなるでしょう。

 

クラスタ-形成の源になった人、海外から帰国した人達で、陽性反応が出た人はまるで犯罪者のごとく世間からバッシング(コロナハラスメント)を受けました。しかし、彼らも誰かから移された被害者であり、誰かに感染させたとしても犯行の動機は全くありません。

 

運悪く感染者になった人は既に大きなストレスを受けているにも拘わらず、世間から隔離され、家族からも遮断されてしまいます。

 

実は、病によるハラスメントは今回のコロナに始まったことではなく、他の感染症にかかった人、難病を患っている人は既に体験していることであり、世間はこういう人達に非常に冷たいのです。

 

現代は、グロ-バリズムが成熟している半面、個人は他人に干渉することなく極めて狭い範囲(物理的空間ではなく、心理的空間)で生きています。

 

しかし、今回のコロナ騒動で、日毎に感染者及び死亡者の増加が伝えられる中、自分だけは感染しないと信じている人、仮に感染しても自分は健康だから軽症で済むと思っている若者は時を追うごとに少なくなってきました。

 

「自分が感染するかもしれない、感染した場合、他人に移せば世間から隔離されてしまう。ひょっとすると既に感染していて他人に移してしまうのではないか」という恐怖心が他人事で片付けられなくなってきています。

 

ウィルスの種類は、5千種類にも上り、そのうち人間に感染するのは数百種類程度と云われています。細菌とウィルスは人類より遥かに歴史が長く、世代交代が早いことから、進化のスピ-ドも人間より桁違いに速いのです。ですから、簡単に倒せる相手ではありません。

 

ホモサピエンスの時代から人は殆ど進化していないにもかかわらず、細菌とウィルスは、ワクチン・治療薬をかいくぐって成長・進化しているのです。

 

では、どうしたらこの厄介な相手に勝利できるのでしょうか。

 

梅毒、破傷風、HIV、エボラ、狂犬病、SARS、MARS、インフルエンザ(スペイン風邪、ソ連型、A・B香港型)、これら多くの感染症も現代医学でさえよくわかっておりません。

 

1年後に収束するとの期待が込められて、オリンビックの開催が1年延期されましたが、期間を区切って人類が感染症に勝つことはそう簡単ではありません。

 

人類より遥かに長い歴史を生きてきた細菌とウィルスは、ウィルスが生物か否かさえも判然としていないのです。仮に生物だとしたら生物進化の頂点に立っていることは間違いありません。生物進化の頂点は、人類ではなく彼等かもしれないのです。

 

細菌とウィルスに勝利する最も有効な方法は、感染予防です。

 

今回の新型コロナウィルスが西欧で感染拡大した理由は、握手・ハグのほか、清潔感の違いが指摘されています。日本人は、世界で最も清潔好きだから感染者が少ないといわれています。

 

もう、10年以上も前の話ですが、ホテルのトイレに入った時、扉を開けると同時に便座のふたが開きました。用を足して、「流」のボタンを押してもいないのに立ち上がった瞬間、自動的に水が流れたのでびっくりしました。

 

「えっ! 人間は便座のふたを開けることすら面倒臭くなってしまったのか。

 

水を流すタイミングの権利さえトイレに奪われてしまったのか。

 

自分の便すらコントロ-ル出来なくなってしまったのか」 

 

「情けない世の中になってしまった」とぼやきながら蛇口の下に手をかざすとセンサ-が働き、適度のお湯が流れ、そのまま送風機に手をかざせば乾かしてくれます。尻を送風で乾かせば、トイレで手を使用することは全く無くなります。

 

このおかげで、トイレが汚いところだという感覚は全くなくなりました。。

 

ヨ-ロッパは、古くはロ-マ時代から天然痘やペストがヨ-ロッパ全土に及び、感染症でずいぶん長いこと苦しみを味わいました。そのわりには、西欧のトイレ事情は、日本のものと比べるとずいぶん見劣りがします。よほど高級なホテルの部屋を頼まないとシャワ-トイレすらないのです。

 

トイレメ-カ-の人達は、日本人が潔癖症だから必ず需要があるはずと考えたのか、感染症対策として考えたのか、それともトイレの神様の熱烈な信者なのか。いずれにしても、このトイレに慣れたせいか、外国のホテルの部屋を頼むとき、最初に尋ねるのがシャワ-トイレの有無になりました。

 

日本では、どんな安ホテルでも湯船とシャワ-トイレは当たり前ですが、ヨ-ロッパでこの2つを満たすホテルはかなり高級なホテルであり、安ホテルに対してさえシャワ-トイレにこだわる日本人を彼らはどう思っているのでしょう。

 

手洗い・うがいの習慣、飲食店では必ず「おしぼり」が提供されます。日本人は、手が不潔なままパンを食べません。神社の参拝は、手洗いと口をゆすぐことから始めます。

 

こういう清潔な暮らしをしたことが裏目となって、細菌・ウィルスによる抗体が少なく、海外旅行ではよく日本人だけが飲料水から病気になる人が多いというデメリットを抱え込んでしまいました。

 

今回のコロナ感染で、手洗い・うがい・マスクが国民の間で定着し、収束後も日常的に清潔意識が習慣化されると、病気に対する抗体を持たないひ弱な民族になってしまう恐れがあります。

 

日本人だけではなく、世界中の人が潔癖症になり、病気になれば安易に抗生物質・抗ウィルス剤に頼り、医者も利益追求のために必要以上に処方することが考えられます。そうすると、人はますます細菌・ウィルスへの抵抗力がなくなっていきます。

 

生物には、個体の寿命だけでなく、種の寿命があります。自然界に適応できないものは絶滅していきます。ヒトの寿命は自ら創った抗生物質・抗ウィルス剤が血液の免疫機能を低下させた時に訪れるのではないでしょうか。

 

現在の科学技術の発展は、猛烈にスピ-ドを加速しています。しかし、ヒトはいずれ免疫機能の低下によって、自然界に適応出来ず、絶滅へと向かっているのかもしれません。

 

※本コラムの文章は中山鑑定士の個人的見解です。

 

中山恭三(なかやま きょうぞう)/不動産鑑定士。1946年生まれ。1976年に㈱総合鑑定調査設立。 現在は㈱総合鑑定調査 相談役。
著書に、不動産にまつわる短編『不思議な話』(文芸社)が2018年2月に出版した。

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