年寄りの愚痴(4)

投稿日:2020年4月27日

 

年寄りの愚痴(4)

 

最近、所得格差の拡大が問題視され、それに伴い教育・医療・税制・社会福祉・職場環境等で差別・不平等を指摘するマスコミが国民に訴えかけています。

 

 

 

何が公正・公平で何が不公正で不公平なのかは基準がありません。立場の違いで公正・公平の基準が大きく変わるのです。ほとんどの議論が客観性・真理を目指しているのではなく、自分の都合が基準になっているのではありませんか。

 

 

 

能力に応じて働き、必要に応じて受け取ると云う夢のような共産主義社会が実現するとは思われません。

 

 

 

公正・公平・妥当の基準がないから、総ての理想を同時に実現することは出来る訳がありません。仮に客観的指標があっても、主観的要素も加味しなくてはならないことがあるのです。

 

 

 

 

 

 

例えばトランプのババ(婆・・・・差別用語であるが他に表現のしようがないのでご容赦ください)抜きゲ-ムで、参加者にカ-ドを配る。その中にババが入っていた人がいた。

 

 

 

〇 何故自分だけに入っているのか。配った人に不正はないのか。こんなの不公平だ。

 

 

 

と言う人もいれば、

 

 

 

〇 自分にババが入っていたから、安心して他の人のカ-ドを引くことができる。それに、誰が自分のババを引くのか楽しいな。

 

 

 

と考える人もいる。

 

 

 

人は生まれながらにして平等ではない。しかし、日本では法律の下では皆平等です。

 

 

 

更に、日本国政府は経済的にも格差を出来るだけ是正しようとして、各種の法律を作って社会福祉を充実してきた。無論、完ぺきではありません。

 

 

 

この社会から、公正・公平・妥当の政策を実行するのは容易ではないのです。

 

 

 

これは何処で読んだか、誰に聞いたか定かではありませんが、政策実行の難しさを例に挙げたものです。

 

 

 

ある国(北欧)が、CO削減とエネルギ-節約を掲げて、通勤・通学者に自転車一台を無料に配ることにしました。

 

 

 

一見、素晴らしい政策のように見えますが、野党から相次いで反対意見が出たのです。

 

 

 

〇 金持ちに無料で自転車をプレゼントすべきではない。

 

 

 

〇 車椅子の障碍者のことを考えていない。

 

 

 

〇 私鉄・市バスの労働組合が反対している。

 

 

 

〇 ある政党から、与党の一部に、自転車業界から不正な金を受け取ったとデマが流された。

 

 

 

機会の平等も簡単には実現できない例です。

 

 

 

税の徴収も、公正・公平・妥当を追求し続けると課税コストが嵩み、最終的には納税者の為にならないことになってしまいます。

 

 

 

だからと言って、評価基準年度を3年毎でなく10年毎にすれば課税コストは削減できるが、公正・公平・妥当ではなくなってしまいます。

 

 

 

更に、納税者は、役所の課税事務がいかに大変な作業の上で納税通知が送られてきたものであるかについては全く関心がありません。

 

 

 

固定資産税課は、役所の各課の中では、最も専門的知識と膨大な作業を強いられる課の一つだと思います。(無論、他の課でも専門性がかなり要求されることは知っていますが、ここでは例として税務課を取り上げました)

 

 

 

だから、他の部署からこの課に配属されると、不動産の基礎から勉強しなくてはなりません。不動産は法的制約規制が複雑で、課税事務の前にこれをある程度マスタ-しなければなりません。

 

 

 

ところが、職員は3年から5年の短期で移動があるために,折角覚えたことが次の部署で役に立ちません。役所の移動は、専門家を養成するシステムになっていないために、どうしても残業が増え過重労働が強いられることになってしまいがちです。現状では、何時、何処の役所で過労死が出ても不思議ではない状況になっていませんか。

 

 

 

将棋をやったことがある人はご存知ですが、将棋はチェスと異なり、相手の駒を捕ったらその役割を変えることなく自分の駒として再利用できるのが特徴です。飛車が桂馬の役割をすることは出来ません。それぞれの専門性を活かして戦うのです。

 

 

 

税務課に拘わらず、他の専門部署でも役所内部の移動ではなく、他の役所間移動を可能に出来たら、職員の慣れによって効率の良い作業が可能となるだけではなく、自分の経験を活かして、課の改革・提案をするチャンスを見出すことが可能になり、それによってよりコスト削減に寄与出来るのではないでしょうか。無論、この移動は本人の了解が必要です。

 

 

 

転勤先の住宅は、空き家を利用することによって労働市場の移動の自由化が起こり、やがて民間に波及すれば地方創生の一助になるかもしれません。

 

 

 

複数の他の役所勤務を経験すれば、最後に自分の故郷に戻った暁には、その土地の文化を反映した画期的事務取扱要領をつくり、課税コストの削減と、より公正・公平・妥当な課税システムが構築されることを期待したいが、課題は多いと思います。

 

 

 

働き方改革が叫ばれている今がチャンスのように思えるのですが、荒唐無稽だと思われるかもしれません。

 

 

 

中山恭三(なかやま きょうぞう)/不動産鑑定士。1946年生まれ。1976年に㈱総合鑑定調査設立。 現在は㈱総合鑑定調査 相談役。著書に、不動産にまつわる短編『不思議な話』(文芸社)が昨年2月に出版した。

 

PAGE
TOP